赤い夕日に黒い影。美桜は走っていた。
「“恋する天使”を録画するの忘れてた!!」
美桜は間に合わせるために、近道の森林に入っていった。ブツッ!チリン…。

美桜は息が切れて森の中を歩いていた。ふとお守りが気になってみた。
「はぁ…はぁ…無い…!!」
焦って、来た道を戻った。しかし、見つからない。必死にお守りを探していると、後ろの草原がガサッと揺れた。
「何…?」
「こんな所にいたのか…ウリエル…。何故今まで気づかなかったのか…。」
美桜は訳がわからない恐怖に襲われた。ただただ目の見えない声の正体が何か探していた。そしていても経ってもいられなくなり、走り出した。
(確か、こっちに行けばうちの神社があるはず!)
しかし、いくら走っても、神社への道へたどり着けない。むしろ暗闇が一層増すばかりだ。後ろからは声の主が近づいてくる気配がする。
ガッ…!!
「あっ!!」
美桜は木の幹につまずいて地面に倒れ込んだ。
「これでルシファー様から報酬が貰える…!!」
声はどんどん近づいてくる!美桜は恐る恐る振り返った。そこには黒くて気体のような体に、ドクロの顔が付いていた。その気体からは大きな腕に鋭い指が生えている。
「あ…あぁ…」
美桜は怖くて声が上手く出なかった。(誰か…助けて!!)そう思って目をつぶった時だった。
ボゥッ!!と青い炎が気体のような怪物の周りを覆った。
「うぅ…!眩しい!!」
美桜が目を開けると、そこには白い髪の少年が背を向けて立っていた。
「…ビル。その子を頼む。」
「了解!!」
ビルと呼ばれた赤いドラゴン(?)のような生き物が美桜の側で飛んでいる。
「何者だ!!…まぁいい。お前等全員喰ってやる!!」
「話せるみたいだから…10人…いや、15人ぐらい喰ってるな。」
美桜は目の前で何が起っているのかわからなかった。しかし、わかる事が1つある。それは今目の前にいるのは、あの白い髪の男の子だということだ。
白い髪の少年は白い札をポケットから取り出した。
「月の光よ。我の意思に答え、暗闇を白く照らせ…!」
そう言うと森の隙間から白い光が差し込みだした。
「ぐ…ぐあぁ!!」
黒い気体のような怪物は光に包まれて消えていった。美桜はその美しさに呆然としていた。そして何故か胸が暖かく、ドキドキしていた。
「あ…あの!」
「早く帰った方がいい。また“ビースト”が現れるかもしれない。」
白い髪の少年は黒い手袋を付けながら言った。
「でも、まだ君の名前!」
美桜は勢い良く立ち上がった。(小さい頃も聞く前に消えちゃった…。だから今度こそ、聞きたい!!)
「それはいつかわかる。ビル、その子を家まで送ってやれ。」
「アイアイサー!」
そう言い残すと、美桜をビルに任せて白い髪の少年は森の中に消えていった。