担任に呼ばれた朝日を教室で待っていること10分。
やっと戻ってきた。



「遅かったね」

「ハゲに捕まったから、隙みて逃げてきた」


教室を出ようとすると呼び止められた。振り向くと手を突き出した彼がいた。
瞬時に理解した私はこう言う。



「もうその手には乗らないし!」


何を言い出すかと思ったら。



「なんだよー。はい、お返し」


私の前に来た朝日は小さな箱を差し出した。


「開けてみれば?」とそう言われ開けてみると…。



「ないじゃん!」
「だからさジャンケンしてよ。そしたらあげるから」
「はあ?!」


朝日が左手を前に出すから、私も慌てて出した。そして出される手の形。
また……負けた。



「ほんと、弱いよな~」


そう言って軽く唇に触れてきた。



「来年は手作り楽しみにしてるから」



先に行く彼の背中に私は笑う。



……ジャンケンなんかきらいだ、ばか。





𝐹𝑖𝑛.