「おい、朝倉」
その声にギクリと肩を震わせる。
すぐ後ろにいると分かっていながらも振り向くことが出来なくて、私はリュックを握り締めた。
「持ってきた?」
「な、にを?」
「なにって、こないだの事忘れたのかよ。チョコだよ、チョコ」
そう来ると思ったから私は嘘を吐いた。
「あ、ああ!チョコね!持ってくるの忘れちゃったの、ごめん!」
とぼけたように笑って済ます私って最低だなと思った。
まして好きな人に嘘つくなんて、さらにサイアクだ。
でも、これで通すしか他にないの。
この中にあるのは手作りじゃなくて市販のチョコで。
心のこもっていないただのチョコなんだから。


