ライターの蓋を開閉するカチャッカチャッという音は、思っていたよりも大きく響いた。
俺は煙草を深く吸い込んで、ゆっくりと煙を吐く。
三度同じ動作を繰り返した辺りで、控えめな足音がこちらへと近づいて来た。
周りのビルの灯りで三峰のシルエットが浮かび上がるが、表情までは見えない。
俺は先手を打って、いつものように声を掛けた。
「お疲れ様っす、三峰主任」
「……高遠さん」
彼女は目を伏せて、俺の座っているベンチの端に腰を下ろした。
「……先客がいるなんて思ってもみなかったから。休憩の邪魔したみたいで……悪かったわ」
俺は思わず、ベンチの端に座る彼女をまじまじと見つめた。
「何か?」
一人分離れた位置に座る三峰からは、まっすぐな視線が返って来る。
彼女の涼しげな顔には何の感情も浮かんでいない。まるで作りものマスクでも被っているみたいに。
つまらない、なんて振られたひとに失礼か。でも、つまらない。
「いえ。謝られるとは思ってなかったんで」
「……そんなに聞きたい話じゃないだろうし。他人のどうのこうのなんて」
「特別聞きたい訳じゃないですけど、耳に入ってくれば聞きますよ。でも話の内容うんぬんよりも、主任が怒らないことに驚きましたけどね。なんでグーパンチのひとつも見舞ってやらなかったんすか」
「だって、そんなの。……殴ったって痛いだけでしょ、あっちも私も」
三峰は出来の悪い子供を諭すような口調で、苦笑を滲ませる。
「けじめはつけるべきだと思ったから呼び出したんだけど。ひとの幸せに水を差す訳にもいかないから……他のひとがいたのは、迂闊だったけどね」
‟けじめ”とは真面目な彼女らしく、当事者のはずなのにまるで他人事のようだ。
俺は煙草を深く吸い込んで、ゆっくりと煙を吐く。
三度同じ動作を繰り返した辺りで、控えめな足音がこちらへと近づいて来た。
周りのビルの灯りで三峰のシルエットが浮かび上がるが、表情までは見えない。
俺は先手を打って、いつものように声を掛けた。
「お疲れ様っす、三峰主任」
「……高遠さん」
彼女は目を伏せて、俺の座っているベンチの端に腰を下ろした。
「……先客がいるなんて思ってもみなかったから。休憩の邪魔したみたいで……悪かったわ」
俺は思わず、ベンチの端に座る彼女をまじまじと見つめた。
「何か?」
一人分離れた位置に座る三峰からは、まっすぐな視線が返って来る。
彼女の涼しげな顔には何の感情も浮かんでいない。まるで作りものマスクでも被っているみたいに。
つまらない、なんて振られたひとに失礼か。でも、つまらない。
「いえ。謝られるとは思ってなかったんで」
「……そんなに聞きたい話じゃないだろうし。他人のどうのこうのなんて」
「特別聞きたい訳じゃないですけど、耳に入ってくれば聞きますよ。でも話の内容うんぬんよりも、主任が怒らないことに驚きましたけどね。なんでグーパンチのひとつも見舞ってやらなかったんすか」
「だって、そんなの。……殴ったって痛いだけでしょ、あっちも私も」
三峰は出来の悪い子供を諭すような口調で、苦笑を滲ませる。
「けじめはつけるべきだと思ったから呼び出したんだけど。ひとの幸せに水を差す訳にもいかないから……他のひとがいたのは、迂闊だったけどね」
‟けじめ”とは真面目な彼女らしく、当事者のはずなのにまるで他人事のようだ。

