* * *無神 峡side* * *





「楽しそうですねぇ」


後ろからそう声をかけられて俺は背筋が凍った。


振り向かなくてもわかる。


俺が落とせなかった女。


ボコボコにされた過去を思い出す。


確かあの頃もこいつの友達に手を出した。


俺は振り返って何も言わずにそいつを見る。


こ...怖い。


紫花に手を出すんじゃなかった。と今更後悔する。


そんな俺の恐怖も知らずにあいつらは伏井に絡む。


頼む、やめてくれ。




そんな思いも通じるわけがなく、あいつらは伏井の喧嘩を買ってしまった。


そして俺たちはボコボコにされた。


あそこであの男が登場していなければ殺されていた....かもしれない....。


それにしても顔ばかり殴りやがって...ひどい言葉も残していきやがった。


でも...


あいつと関わってるやつとはもうかかわらないでおこう。


俺は仕返しをする気にもなれなかった。


だって、徒競走ですら俺はあいつに勝てないのだ。