「相変わらず無愛想だなぁ。も少し柔らかければ楓佳ちゃんも……。
いやいや、こいつが温和な方が怖いな……」

ごにょごにょと独り言を繰り返すこいつに
俺は軽く蹴りを入れてやる。

「いでっ」

「無愛想で悪かったな」

図星だから腹が立つ。
俺は大袈裟に痛がる悠介の隣を素通りして、自分の席に座った。

そういや、今日も楓佳と帰れるんだっけ。
緩む口元を抑えて、一限目の教科書の支度をする。
楓佳の事を考えるだけで、
気持ちが明るくなって、笑顔でいることができる。
不思議なもんだな。

けれど、知りたくもなかった事を知ることになるなんて、
今の俺には知る由もなかった。




昨日と同じように生徒玄関で楓佳を待つ。
特に待つことも無く、すぐにやってくる楓佳。

「ふぅっ……少し待った?」

「ああ。結構待った。おっせぇよ」

そこまで待ってもいないのに何故か嘘をつく俺。
「ごめん……」と申し訳なさそうに謝る楓佳に、
思わず笑みが溢れる。

「嘘だっての。お前ってマジ騙されやすいのな。
てかさ、朝大丈夫だったか? 俺の方は女共がウザくて……。なんか、迷惑掛けたんなら
マジごめん」

そう言うと、楓佳は困ったように笑った。
この表情は俺と同じ目にあったって顔だ。