俺がそう言うと、楓佳は花が咲き誇るような笑顔を
顔に浮かべた。
俺より年上のはずなのに、どこか幼くて
だけど可愛くて。
熱くなる顔を見られないように楓佳から視線をそらした。

「外靴、履きにいけよ」

「うん」

返事をすると楓佳はその場から離れ、
靴を履き替えに行く。
俺は生徒玄関を出ると、
楓佳を待った。

「お待たせっ!」

「ん」

玄関前は家に帰ろうとする生徒がたくさんいて、
中には俺達を見て、ひそひそ話をする奴もいた。

鬱陶しいな……。

俺は反射的に楓佳の手を握って、
スピードを出して歩き始めた。

学校から少し離れた所で──。

「ちょ、ちょっと! 雪斗ってば!」

「何だよ……」

「手!」

そう言われて、俺はばっと握っていた右手を離した。
右手が熱を帯びていて熱い。

何やってんだ。俺。
こんなんじゃ、学校であいつらがウザくなるだけじゃねぇか。

「……ごめん」

「別にいいけどさ……」

楓佳は特に意識してないようで、
いや、しているけれど。

俺ほどではない、か。

無意識にやったことだけど、
俺ばっかりドキドキして、ちょっとはずい。

帰宅時は、朝とは違ってお互い無言になってしまった。