『お前も分かってるだろうが、気持ちを伝えずして、
楓佳ちゃんに意識してもらえるとは思うなよ。以心伝心なんて恋愛にはないからな』

悠介の言葉を心の中で繰り返していると、
それを終わらせるかのようにチャイムが鳴り響いた。
悠介はそれに気づくと「じゃ、また後で」と言葉を残して、教科書の準備をし始めた。

授業が始まっても、俺の頭の中は楓佳の事でいっぱいだった。

──俺は全然気づいてなかった。
楓佳への気持ちが自分が思っていたよりも大きくて、
好きっていう気持ちも消せるものではねぇんだって。




サッカー部の顧問に入部届けを渡しに行った後、
下駄箱の前で靴を履き替えて帰ろうと支度をしていた。
楓佳と帰ろうかなとも考えたけど、あいつも部活だろうし。
かといって、悠介とは学校出ればすぐに別れちまうし。
仕方ないから一人で家に帰ろうとしていた。

「雪斗っ!」

靴を履き終わり、玄関から出ようとした時、
後ろから俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

「楓佳、お前、部活じゃねぇの?」

俺を探すのに息を切らしていたようで、
肩を上下させる楓佳。

「今日と明日は……、部活は休みって部長が言ってた……」

「ふぅん、じゃ、一緒に帰れるな」