人が全く来ない屋上。
私の隣には私の握ったおにぎりを頬張る雪斗がいる。
私も同じようにおにぎりを食べているけれど……。

何なんだろう……?
この異様な近さは。

私が避ければいい話だけれど、
屋上の片隅に座っているわけで、左には壁。右には雪斗。
別に追い詰められてるわけではないけど、でもやっぱり近すぎる。

「……雪斗? なんか……、近くない?」

「んぁ? 何がだよ」

「い、いや、やっぱり何でもない……何でも……」

雪斗の何とも言えない空気に言う気も失せてしまう。
まるでそれが当然かのような様子に、
どうにも戸惑う。

「ふぅん、何でもねぇんだ? まあ、良いけど」

私の言わんとしている事を分かったような言い方。

「なんか……、雪斗、変わった……ね?」

「……気のせいじゃね」

「いや、気のせいじゃないでしょ。なんか……、積極的になった、というか……」

途切れ途切れにそう言っていく私の肩に、
雪斗の手がそっと乗る。
私はそれに合わせて、雪斗の方に視線を向ける。

「……その意味、分かんねぇの?」

鼻と鼻がぶつかりそうな程に至近距離で私を見つめる雪斗。
目を見開きながら、首を軽く横に振ると、
「そう」と言って、私から離れた。

不覚にもドキッとしてしまった自分がいる。
それが何故かは分からなかった。