頭をぼりぼりと掻きながら歩く俺。
イライラともやもやしたような複雑な気持ちが入り交じっているようで、
落ち着かなかった。

嫉妬っていうのかな。
何というか……、
他の男に楓佳が笑顔を向けると、
変な感じがする。
告白もしてなくて、恋人同士でもねぇのに、いっちょうまえなのも分かってる。
だからこそなのかもしれない。
手をぎゅっと力強く握りながら俺は足早に家に歩いていく。




「ただいま」

リビングへのドアを開けてそう言うと、
イスに座って、テレビを見ていた澄澪さんが俺の方を見て少し驚いた顔をした。

「お帰り。雪斗。あら、楓佳は?」

澄澪さんには今日一緒に帰ると伝えていたから、
俺一人だったのがびっくりだったんだろう。

「……今日、部活だったんだと」

今思い出したけど、楓佳に何も言わせずに、
玄関出ちまったな。
ほんとに俺ってどうかしてる。

「まあ……。あの子ったら道具持ってってなかったじゃない」

「部長さんが準備したらしいから問題ないんじゃね」

「なら、良いのだけど……」

澄澪さんの呟きを最後に、俺はリビングから出て
階段を登って部屋に歩いていく。
鞄を置いて即行、ベッドに大の字になって、目を閉じた。