「雪斗~!もう行く時間だよ。早く下に降りて!」

飯を食った後、汚れもない真新しい制服に着替えている俺。
一階からは楓佳の声が聞こえてくる。

「んー、ちょっと待ってろ」

首元のネクタイを緩く結び、
鞄を手に持つと、階段を早歩き。

リビングのドアを開けると、そこに立っていたのは
見慣れた制服に着替えた俺より1つ年上の楓佳。

「もう……、雪斗ってば準備するの遅すぎ。早く行かないと遅れちゃうよ」

4月の春。
入学式からもう数日が経つ。
高1になった俺、佐藤雪斗はこうして楓佳と学校に行く事が日課となった。

俺は小さい頃、両親を事故で亡くし、
楓佳の両親である澄澪さんと仁さんに引き取られた。
だから、餓鬼の頃から楓佳とは姉弟のように生活を送ってきた。

とはいえ、俺は楓佳を姉として見てるわけじゃあねぇんだけど。

「あぁ、わりぃ。んじゃ行くぞ。澄澪さん、いってきます」

「いってらっしゃい。気を付けていくのよ」

台所で皿を洗っている澄澪さんに挨拶をして、
俺は玄関に向かう。

「いってきます!」

親についてくる子供のように楓佳は
俺の後ろを歩いてくる。

こういうところが結構可愛いかったりする。