吸血ロミオ

警戒した様子の智花だが、特に結依さんにあたしに対しての敵意があるとは思えない。


それに…何の話なのか気になるし。


あたしは「先に行ってて」と智花に伝えた。


「それじゃ、行こうか」


再びにっこり微笑む結依さんの華やかなオーラに気圧されながらも先を行く彼女に並ぶ。



「ここでいいかな?」


人気の少ない空き教室の前まで来ると、結依さんは辺りをキョロキョロ見回した。



「それで、話なんだけど…」


人がいないのを確認した後、結依さんは早速本題に入る。



えっ、急に⁉︎


反射的に身構えてしまうあたし。



…何?


「あたしね、昨日の放課後の記憶がないんだ」




…え。


結依さんの口から出た言葉にあたしは心臓がドクンと脈打つのが分かった。



記憶が、ない?


言葉が繰り返される。



まさか、ホントにセンパイが結依さんの記憶を消したというの?



でも、昨日から不思議なことが起こり過ぎたせいか、意外とあたしは平静だった。



けど……


記憶がないなら、何故結依さんはあたしを呼び出したんだろう?



あたしはそっと彼女の表情を盗み見るが何を考えているのかは分からなかった。