吸血ロミオ

急に奇声を上げたあたしに、その人は驚いたように肩をビクッと震わせた。


「だ、大丈夫?脅かしてごめんね?」


「い、いいえ…」



途端、ふわりと香るシトラスの匂い。


その人は栗色のショートヘアを揺らしながら、あたしを見つめていた。


大きくて、小動物を思わせる丸い瞳に見つめられ思わずどきりとする。



「えっ…と、何か?」


穴の開くほどじっと見つめられて少し肩身が狭い。



「あの…ね!聞きたいことがあるんだけど…」


その人はそう言うなり、あたしに向かって突然ニッコリと微笑んだ。



「私、三年A組の大橋 結依。あなたは…一年の小春ちゃんよね?」


う、わ…すごい美少女…


彼女が微笑むと、その場がパァっと華やぐような気がする。



小柄な身体に歳の割には少し幼い、愛らしい顔立ちの結依さんは美人というよりかは、かわいいと言った方が当てはまった。



ていうか、なんであたしの名前なんて知ってるんだろ…


三年のただでさえ接点のない先輩が一年の中でも目立つことのないあたしを知ってるとは思えない。



…嫌な予感がする。


「それで…聞きたいことって?」


隣にいる智花にチラッと目をやりながらそう尋ねる。


「あっ…ごめんね。私少し小春ちゃんとお話することがあって…」



「いや、別に私は大丈夫ですけど…」


申し訳なさそうに手を合わせる結依さんにそう答えながらも、その目は心配そうにあたしを見つめている。


…まぁ、仕方ないよね。


昨日が昨日だし。