「……はぁ」
「小春〜、朝からため息ばっか着いてたら幸せ逃げてっちゃうよ〜」
いつもの通学路。
いつもの智花との通学。
いつもの何気ない会話。
……でも、さっきからため息はもう13度めだ。
「逆に聞くけど、智花はなんでそんな幸せそうなの?」
どんよりオーラ全開のあたしとは反対に智花はいつもより幸せオーラ全開だ。
……なんかいいことでもあったのかな。
「ふっふーん♪まあねぇ〜」
「……なんだよ、教えてくれないんだ」
智花はもったいぶるような素振りで教えてくれないらしい。
…さらにどんよりと不機嫌オーラ全開になったあたしを見て、智花はキョトンとした。
「どうしたの、小春?そういや元気ないじゃん」
「今さら?」
気付くのが遅い智花に苦笑しながらあたしは不機嫌な理由を話そうか迷う。
……智花、実はセンパイね、ヴァンパイアだったんだよ。
それと同時に智花の「は?」と訝しむ声が想像できる。
絶対信じてもらえないよ……
「昨日はセンパイと帰宅デートって頭の中お花畑だったじゃない。……ウザいくらいに」
「最後の一言余計だよ!」
いつも余計な一言を付け加える智花に突っ込みつつ、あたしは更に話そうか悩む。
「……智花」
「何よ、改まっちゃって、気持ち悪い」
急に足を止めて真顔になったあたしを見て智花が眉をひそめる。
一瞬聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするけど、さらりと聞き流して向き直った。
「智花、あたしが今から言うこと信じてくれる?」
あたしが智花の目を見つめながらそう言うと、智花は「ふん」とバカにするように鼻を鳴らした。
「……あんたがウソつく人間じゃないことぐらい、とうの昔に知ってるわよ。
何年の付き合いだと思ってるの」