吸血ロミオ



う、わ…どうしよう……くらくらする。



綺麗な人は何をしても絵になるんだ……



あたしがそんなことを思ってるなんて気付かないのか、彼は『……じゃあ』と呟くなり背を向けてしまった。



ちょ……っ!帰るのも突然すぎない?




『あ、あの……っ!』



あたしはスタスタと歩いて行ってしまう彼をまたとっさに引き止めていた。



せめて、名前だけでも聞きたい。



呼び止めたあたしの声が届いたのか、彼は足を止めて振り向いてくれた。



『今日はホントにありがとうございましたっ!


あの…名前を教えていただけませんかっ?』



秋の夕日を背負った彼の漆黒の髪はオレンジ色の光にきらきらと輝いている。



彼は柔らかく、ふっと笑った。



……でも、少し切なそうに。



『……桜井 忍』


…その名前に聞き覚えがあるように感じた。



『あ、あの…っ!』



何か言おうと口を開く。


しかし、いつの間に言ってしまったのか、彼の姿は消えていた。



……辺りには懐かしいような、秋には似合わないマリンの香りが残っていた。