少しだけしゃべったけど、あまりよくしゃべる人じゃないのは、何となくわかる。



……助けてもらったし、お礼言わないといけないよね。


あたし、彼が来てくれなかったら死ぬとこだったし。



自分で言ってみて、ぞっとしてしまった。



『あ、あの…っ!さっきは危ない所を助けていただいてありがとうございますっ!』



…沈黙を破るのは少し勇気が要ったけど、あたしはベンチから立ち上がるとペコリと頭を下げた。



彼は『どういたしまして』とも言うでもなく、あたしを見つめたまま整った唇を開いた。



『…ケガはないみたいで、よかった』



そう言ってクールな印象を与える瞳をふっと和らげて、笑う。