だ、れ……?


ふわり、と嗅いだことのあるマリンの香りが鼻をくすぐる。


わ…っ!こんなカッコイイ人、見たことない……!



さらさらとなびく漆黒の髪。


切れ長の吸い込まれそうな髪と同じ色の瞳。


整った顔立ち。



こんな完璧な容姿の持ち主は今までいなかった。



……年上、かな。




今轢かれそうになったばかりだと言うのに、あたしはもう彼の容姿にドキドキが止まらない。



『…危ない所だったね』


彼があたしを抱きかかえながらそう言う。



……ん?抱きかかえ……ってえええぇえ⁉︎


あたしは彼のたくましい腕の中にすっぽりと収まっていた。


こ、これって世に言うお姫様抱っこ⁉︎



男の子に免疫のないあたしはそれだけでもう顔がゆでだこのように熱くなっていく。


『お、下ろしてくださいっ!』



し、心臓がもたない…


そう訴えるも、


『…もしかしたらどっかケガしてるかもしれないし。安全な所に運ばないと』



彼は無表情のままそう言うなり、あたしをかかえたまま歩き出した。