「……俺たちヴァンパイアは何も食べなくても生きていけるけど、代わりに若い女の血を吸って生きていかなくてはならない」
センパイが口元のキバを輝かせながら歩み寄ってくる。
今は何も考えることはできない。
……でも、センパイのことをこの時初めて怖いと感じた。
「安心して。ヴァンパイアに口付けされた人間はそのことを忘れる。
……だから、俺のことは君の記憶に残ることはない」
…でも、妖しい瞳にとらわれて、逃げ出せない。
センパイはクスリと笑みをこぼすと、あたしの肩を掴んだ。
あたしの好きになった…あの日であったセンパイは……ヴァンパイアだったの?
そんな……
ヴァンパイアなんて、おとぎ話だけの世界だと思ってた。
でも、まさか…こんな風に……少なくともあたしが出会うなんて思わなかった。

