な、に、今の……
見間違いじゃない、よね?
この目で見たものが信じられず、一瞬呆然としてしまう。
センパイはあたしが見ていることなんて気付かず、彼女の唇を自分の唇と重ねた。
……ホントはこんな光景、見たくなかった。
けど。
……でも今のあたしにとっては、さっき見えたキバの方に目を取られてしまっていた。
少し強引に唇を奪われた彼女が「ん……うっ」と声を出す。
しかし、二人の唇が離れた時、彼女は……
気絶していた。
な、なんで⁉︎
そう思ったのと同時に、センパイは吸い寄せられるように首筋にその鋭いキバを突き立てた。
プツッと何かが切れる音がして、センパイの喉が上下に動く。
……センパイ?
その瞳はあたしの知ってるセンパイとは違い、ぞっとする程妖しくて冷たかった。
な、何が起こってるの?
今見ている光景が信じられず、何も考えられない。
やがて、センパイは首筋から顔を離すと、血の着いた口元を拭った。
今起こっている現実はあまりにも非現実じみていて、ぐるぐると目眩も起こってくる。

