長い沈黙の末にセンパイは静かだけど、確かにそう言った。
……え?今、なんて……
「やったあ!」
キンチョーに包まれていた彼女の頰が緩んでいく。
……でも、それに反してあたしの頰はどんどん強張っていった。
うそ、だよね?センパイ。
信じたくないよ……
とっさのことで頭がうまく回らなかったが、それでも頭のどこかでは認めることを拒んでいた。
こんな光景、見たくないのにそれでもあたしの目は二人に釘付けだ。
「じゃ……」
突然、センパイの唇が吸い寄せられるように彼女に近付く。
「っ⁉︎」
ーーでも、あたしはそのセンパイの口元から鋭いキバが覗いているのを見逃さなかった。

