「あ、ありがとうございます」


そう言ってくれる桐谷センパイにペコッと頭を下げ、背を向ける。



桐谷センパイはそんなあたしを見て、「またねー!」と親しげに手を振ってくれた。



センパイは校舎裏か……


A組の教室から校舎裏まではけっこう遠いし、もう移動してるかも……


それにしても桐谷センパイ、話しやすい人だったな……


ますますセンパイと仲良いのが信じられなくなる……


なんて考えている間に桐谷センパイがあたしの背中を見ながら何を呟いていたかなんて、知る由もない。



「ふーん……確かにあの子、美味しそうな血してるじゃん。

忍が気に入りそう」


そう呟く彼の口元からは鋭いキバが光り、真っ赤な舌が唇をペロリと舐めた。










急ぎ足で校舎から出ると、ちょうど校舎の角を曲がるセンパイの姿を見かけた。



「せ、センパイ!」


そう声をかけたが、どうやら気付かなかったようで彼の姿は見えなくなってしまった。



センパイと同じ方向に校舎を曲がる。


「せんぱ……」



しかし、声をかけようとしたあたしの言葉はそこで打ち切られた。