「さ、桜井センパイいますかっ⁉︎」



……やっちゃった!


声、ひっくり返っちゃったよ!あたしのバカ!



A組の人たちの視線が一斉にこちらに向けられる。


「う……」



視線が突き刺さり、思わずうめき声を上げてしまった。



……もう、やだ。帰りたい……


恥ずかしさのあまり帰ろうとも思った時だった。



「あー、ごめん。忍今いないみたいだわ」



A組から出てきたのはまさにチャラ男という表現がピッタリな茶髪の男の人だった。



親しげに話しかけてくれるその人に、若干キンチョーが解けてホッとする。


瞳も薄い茶色で顔立ちも整ってるが、センパイとは正反対の雰囲気の人だ。



……センパイの友達かな?



ニコッと笑った時に覗く両はしの歯が少し尖っているのが印象的だ。



…そういえば、センパイも笑った時に少し歯が尖ってたような気がする。



「もしかして忍に何か用あったの?あとで忍に伝えとこっか?」


人懐っこい笑みで聞いてくるが、あたしは首を振った。



「いえ!大丈夫です!

あ、でも、どこにいるか教えてもらえませんか?」


「んー……

忍ならさっき校舎裏に行くのを見たけど……

あ、もしかして君、忍のカノジョだったりする?」



センパイの居場所が分かったのはいいものの、その質問にドキッとした。



「な、なんで……」



彼はそんなあたしを見て陽気に笑う。



「あはは!絶対そうだ!

忍、俺には何も言ってくれなかったのに!

あ、俺桐谷龍騎ね。一応忍の友達だから」


一応って……


センパイと桐谷センパイ、あんまり仲良くしてる姿想像できないな……



なんて思ってると桐谷センパイはそれに気付いたのか再び笑った。



「今、俺と忍が仲良くしてそうに見えないって思ったでしょ?

でも、これでも忍とは小さい頃からの付き合いなんだよ。

忍ってあんまり女子と関わりたくないらしくて、だからね……」



桐谷センパイはそこまで言って深くため息を吐いたが、すぐに「なんでもない!」と笑った。



「あ、名前聞いといてもいい?」


「高峰小春です」


「ふーん……小春ちゃん、か……」



桐谷センパイは意味ありげに呟いた後、また陽気な笑顔に戻る。




「じゃあ小春ちゃん、忍なら校舎裏にいると思うから!

あと、忍が戻ってきたら俺も小春ちゃんが来たって伝えるよ!」