「もう、ゆかりもメールすればーー」


扉を開けようとしたら、私の視界には…………。


「おはよう」


「びっくりしましたよ。黙って聞いてたんですか?」


「今来たばっかなんだけどなあ」


憎たらしいほどとぼけているこのお方はゆかりが昨日まで率いていた女の子集団のプロデューサー社敬輔(やしろ けいすけ)先生。


今の私を築いてくださった一人でもある。


ただ…………。


「先生、入る前にいいですか?染めました?」


「染めたよ」


あっさり認めたのには意外だ。


「若作り似合わないですよ」


「今日のために染めただけだよ。娘からも白髪の親父の方がかっこいいって…………。俺から中に入るぞ」


心情察します。


制作のストレスと、高校二年生の娘の奈未(なみ)ちゃん問題が重なってるから髪の毛が寂しくなるんですよね。


男親は不憫で仕方がないですね。