うわーぁ、混んでるなーぁ。

まずは百均に向かった。

ラッピングも意外と可愛いのたくさんある。

「岸くん、グループで紫担当なんだって」

楽しそうに紫のパッケージの

ラッピングに手を伸ばす。

「玲奈は誰かにあげないの?」

んー、あげる予定はないかな。

「由羅にあげるーぅ♡」

そう言って抱きついてみる。

「ちょ、キモい。」

私を押して離れさせようとするけど、

離れてやるもんか。

「おーい!玲奈ちゃんと由羅ちゃん!」

向こうから名前を呼んだのは、

岸くんだった。

「き、きき岸くんっ?!ん?!」

目の前まで走って来る姿は

もう王子様にしかみえない。

「なんでここにいるの?!」

由羅はテンパってる。

「近くで撮影してんだよ!

んで、ジュース買ってこいって岩橋が!

由羅ちゃん達もここでバレンタインの?

誰にあげんのかなーっ!笑」

俺?俺?と、笑顔で自分を指差している。

ほら、この笑顔。

眩しい。見てられない。

「玲奈ちゃんー、どこ見てんだよー。」

眩しくて下を向いてる私に話しかけてくる。

私の目線には大っきな靴。

うそ、目の前にいる?

黙って由羅と話しててよー来ないで。

って、私さっきから変?

別に好きとかじゃないのに、

なんで顔見れないの?

いや、違う、眩しいだけだ。

確かに可愛い子、イケメンは好きだけど。

ただそれだけ。

「っ。おい!」

ぼけーっとそんなこと考えてると、

顎に暖かい感触。

目の前には岸くんの顔。

顎クイーーーーーーっ?!///

「お、おいどしたっ?!熱あんの?!」

「玲奈顔真っ赤だよ?!」

え、ヤバい。どうしたの。

なにこれ。なんか心?胸?おむねの辺りが

ジンジンする。顔が緩んでる。きっと。

こんな感情初めてだし。

顎クイなんてものされたのも初めて。

体の力が抜ける。

待って、ここ百均。

それでも場所なんて関係なく、

床に座り込んでしまう。

「おいっ!どうした?!玲奈!!」

岸くんの声、ダメ。

私どうしたんだろ。

これ以上倒れてしまわないよう、

岸くんの手は私の腕と腰を

掴んで支える。

うわぁ、大っきな手。

「由羅ちゃん!!

玲奈ちゃんのバック持って!」

「ぅ、うん!」

「よぉーーっし!!ふんっ。」

体が浮き上がる。

・・・私、岸くんにお姫様だっこされてる?

目をちゃんと開けると、

岸くんの横顔が近くに見える。

目が合ってしまう。

「だいじょぶ?」

いつもの大きくて元気な声と違う、優しい

静かな声。ニコッと笑う。

「ご、ごめ・・重いでしょ・・・

おろ・・して・・?」

私の言うことなんて聞かず

百均の外に足を運ぶ岸くん。

力が抜けてるから声も上手くでない。

本当におかしい。どうしたの私。

「きーしーくーんっ!どしたのっ?!

女の子拾った?!」

「岩橋ーーーっ!あんな、百均で

倒れちってよ!!」

「えぇーー?!なに、百均ーー?!笑

誰、どこの子ー?!」

すると、目の前の岸くんから違う顔が

ひょいっと現れる。

「う、うぅぅうわぁぁぁあ!!」

「う、おぉぉおおぁあっぶね!」

私は岸くんの腕から落ちてしまう。

百均の入り口の前でお尻をついて転ぶって

かっこ悪い。

一気に目がさめる。

「ビビったぁー!!玲奈ちゃんだいじょぶ?」

手を差し伸べてくれる岸くん。

その手を掴もうとした私の手を、

由羅が引っ張って起こしてくれる。

「由羅、ありがと」

返事がない。

「んもぅ、岩橋がビビらせるからだろ?!

いきなり顔出すなよ!!」

「うわー岸くんが怒る!うるさい!

耳が壊れるーー。」

「お前ら遊んでないで、行くよ!

撮影始まる」

岸くんと、岩橋くんを探しに来たっぽい

同じアイドルグループの

神宮寺 楓(ジングウジ フウ)くんが

遠くから叫んでいる。

楓くんも岸くんたちと一緒に

隣の3組のクラスに転入してきた。

真っ暗な黒髪に

男らしい目つきをしている。

「あっ、ジーンー!!

なんかね、岸くん、

百均で拾った女の子

持ち帰ろうとしてたぁ!笑」

「おいちょっと!!変なこと言うな!」

「いいから行くぞ!」

3人は仲良く現場に戻っていく。

「由羅。ごめん。迷惑かけちゃって!」

遠くなる3人の方を向いたまま謝る。

なんとなく、由羅の顔が見れない。

由羅からの返事はない。

やっぱり、なんか怒ってる。

「岸くん、玲奈のこと、玲奈って呼んだ」

・・・え?

「私にちゃん付けだったのに。

玲奈のこと、よびすてした。」

全然気づかなかった。

由羅の方を見ると、

唇を噛んでるのがわかる。

スカートも握っている。

「ゆ、由羅!!ごめん!!」

「玲奈、岸くんのこと好きになった?」

いきなりの問いかけに、言葉が出なくなる。

え・・・

私、なんていえばいんだろう。

なんで考えてるの?

答えなんて、決まってるじゃん。

友達が、親友がすきなひとだよ?

応援しなきゃダメ。

そんなのわかってるのに。

「っ・・。」

声が出ない。

「私・・・、玲奈とライバルだっ。」

「えっ。ね、ごめ・・」

「謝らないで!!」

大声を出す由羅にびっくりしてしまう。

「好きになっちゃうことは、仕方ないよ。」

「だけど・・・」

「だって、カッコいいもん。

私が認めたひとだよ?

ライバルは多い方がやる気出るし!

だから・・・勝負しよっか」

「え、由羅・・・だけど私、

由羅に勝てる自信ないし

親友と取り合いなんてやだよ。」

「玲奈は自分に自信なさすぎる!

だらしないってとこなくせば、

顔だって可愛いし、モテるのにさ。」

由羅に褒められるなんて初めてかも。

「私・・・単純だけど、

今ので岸くんにキュンキュンしちゃったの。

きっと、これが恋ってものなのかなって。」

実際に恋はしたことがないけど、

マンガを読んでるときに出る

あのキュンキュンと同じもの。

これがきっと胸キュンだ。

「恋するって、楽しいんだよ。」

マンガの主人公がいつか

言っていた言葉。

私も、楽しみたい。

いいよね、や、だめかな。

・・・いい、よ、ね。

「よぉーーっし!それじゃ、

これからは恋のライバルってことで」

「由羅、ごめん。ライバルってことで!」

「うふふ、こんなの初めて!笑

明日からはライバル同士、頑張りましょ♡」

私達は今日をもって、

"親友"から"恋のライバル"

へと変わった。