目覚めると見慣れない天井が目に入って、意識が覚醒する。

すぐに昨晩のことを思い出して抱いていた警戒心が溶けた。


布団からするいい匂いは昨晩と変わらなくて、思いきり吸い込むと爽やかな香りが広がる。

あとでなんの匂いか教えてもらお。

時計の針を見ると10を少し過ぎていて、久々にこんなに眠ったせいなのか体の節々が少し痛い。

たっぷり10分ほど使ってのそのそと起き上がる。

ぐーっと伸びをしてリビングに向かった。





「おはよ~」


部屋の電気がついていないのがわかったから小声で挨拶をしてリビングに入る。

ソファーで彼が寝ているのがわかって近づくと彼はソファーの3分の1ほどのスペースに小さくなっていた。

なんだかそれが可愛く感じて、少し笑みがこぼれる。

暗い部屋に目が慣れてきて、私はやっとこの部屋の異常さに気づいた。


「すごい…」


壁一面、本で埋め尽くされていた。

遮光カーテンが揺れる窓際以外の全て壁に本棚が置いてあって、そこにこれでもかというくらい本が敷き詰められている。

学生時代に読んでいたものからビジネス書、もちろん漫画も置いてあるこの本棚に私は圧倒されるしかなかった。


「…はよ」

「あ、ごめん起こした?」

「いや、いつも起きる時間と変わらないから大丈夫
カーテン開けてもらえる?」


彼の言葉でカーテンを開ける。

いきなり入ってきた光に目が慣れなくて眩しい。


「俺ちょっとコンタクトしてくる」


後ろにいる春斗が動いたのがわかった。

開いたカーテンを括っているとどたっと後ろで物音がして、慌てて振り向くと


「いってぇ…」


ティッシュに滑った彼が盛大に転んでいた。


「なにしてんの」

「俺だって転けたくて転けた訳じゃないし!」


私の方を見ずにそう言って立ち上がる。

普通人と話すとき、一言二言でも相手の方を向いて話さない…?

彼がリビングから出ていく。少し見えた横顔に私は自分の目を疑った。



目が、青い。



恐らく、片目だけ。

片方の目がカラーコンタクトを着けたように青い。

でもその可能性はないと言い切れた。


だって彼は今『コンタクトを着けにいった』のだから。


もしかしたら光の加減でそう見えたのかもしれない。

でも仮に、仮に彼の目が本当に彼の目が青だったとして。


それはいつから、なんのために?


彼は純血の日本人だし、そんなの一番私がよく知っている。

彼のご両親とは面識もある。

突然変異?そんな馬鹿な。

それなら私たちぐらいには伝えてくれてもよかったはず、でしょ?


「どういうこと…?」


自分のキャパシティを越えている。

いくら考えてもわからない。


「遅めの朝ごはん食べよっか」


いつの間にか戻ってきていた彼の言葉にうなずく。

正面から見た彼の目はいつも通りの見慣れた色だった。