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「お帰り彩羽ちゃん、荷物多いね!お母さんたちとゆっくり話せた?」




頭の中が混乱して、ここまでどうやって帰ってきたか覚えていない。




「彩羽ちゃん?」




「あ、おい…先輩……あ、これお母さんたちからお土産です!あたしちょっと頭痛いので部屋で寝てきます」




心配そうに顔をゆがめる蒼先輩の横を通ってあたしは自室に戻った。




お母さんの言う、‟大事な話” 。それは……


_アメリカへの、留学だった。




パタンと部屋のドアを閉め、そのまま座り込む。




お母さんの仕事関係の知り合いが、娘さんも本格的にヘアメイクのプロを目指さないかって、あたしを誘ってくれているらしい。




アメリカの専門学校でプロに教えてもらう。


ほかの人からしたら、願ってもないようなビッグチャンスかもしれない。

でも……あたしは




いまとなってはここにいるのが当たり前で、ここが大切な居場所で…… Swalowtail Butterfly が、なくてはならないかけがえのないもの。


みんなのいない毎日が……想像できない。




『一度向こうに行けばたぶん、3年は戻って来れない』




3年後、あたしのいない Swalowtail Butterfly はどうなっているんだろう。



大活躍して、スターになって。

……あたしの知ってるみんなはいなくなってしまうかもしれない。




それが怖くて、辛い。