【彩羽side】
「お父さんと私、来週から海外転勤なのよ」



いままでの人生で一番、自分の耳を疑った瞬間だった。


朝からなんなんだろう、お母さんねぼけてるのかな?




「……え?」




「彩羽のことはお母さんのお友達が経営しているシェアハウスのお手伝いとして預かってもらうことになってるの。3日後から行くって言ってあるから、準備してね?」




転校は嫌だからちょうどいいかもしれない。




「彩羽は高校楽しいって言ってたし、ここに残そうってお父さんを説得したの」




「それで、お父さんは?」




「彩羽を絶対に連れていく!!ってうるさかったけど、なんとかなったわ」




うちの父は、自分で言うのはあれだけどいわゆる……過保護。


おかげで高校生になった今でも門限は7時、遊びに行くときは場所と時間と誰と行くのか、いちいち説明させられる。



「彩羽だって花の高校生だもんね!楽しみなさいよ、シェアハウス」




にんまりと笑みを浮かべるお母さん。




「なに?その顔」




「いやぁ?ふふふ、ちゃんと報告してね?」




意味が分からないけど、あたしはスルーして自分の部屋に向かった。