美味しそうな香りが鼻孔をくすぐる。

テレビの音、人の話声、暖かな空気の流れ。

そんな物を感じて意識が浮上する。

目を開き、節々のキシミを感じ、足の痺れを自覚する。

膝を見れば、黒っぽい猫が居座り、丸くなっていた。

猫、、、いつの間に。

「あ、佐東君起きた?丁度ご飯だよ。
ほら、クロベエ、こっちおいで。」

見渡すと、先輩と、先刻会ったお兄さん、他に両親らしき人と、若い男性の五人がこちらを見ていた。

「あ、お邪魔してます。寝てしまったみたいで、済みません。」

「挨拶はいいから、ご飯食べな。」

お父さんらしき人が声を掛けてくれた。

「佐東君、先にトイレ行っておいでよ。

守はクロベエにご飯あげて。

あ、この子、桜木守ね。イトコで、大学生。今は冬休み?」

「うん。冬休みだけど、奈央ちゃんに会いたくて来たんだよ。」

イトコだと言うその男は、茶髪で背が高く、女の子にモテそうな外面だった。