ブシュッ

血が空中を舞う。

僕はの目の前に赤い光景が広がる。

「せ、雪麗…」

少年は震えている。


ドシャっ

鈍い音がした。

慌てて彼女の方向に向かう。

雪麗は血まみれになって横たわっていた。

「雪麗、雪麗っ!!!!」

彼女の体を揺さぶる。

反応がない。

「雪麗…なんで……こんなこと」
大粒の涙が彼女の頬に落ちる。

「雪麗……」
何度も彼女の名前を呼ぶ。


「う…」

彼女から弱々しい声が聞こえる。

「雪麗!?」

彼女を持ち上げる。

彼女は自分の手を見て、
「私…血まみれだ。」
と言った。
少し悲しそうな彼女の声だった。

「早く逃げよう!!」

肩に抱き上げようとするが、彼女は登る力もなく、スルスルと地面に落ちてしまう。

彼女の横腹からはドクドクと血が溢れている。

「っ…あなただけでも逃げて」

「嫌だ!!」
「何言って…」
彼女の言葉を遮り、

「やっと出来た、友達なんだ…見捨てたくない。一緒に逃げよう!!!!雪麗!!」

彼の瞳からは涙がいっぱい出ていた。

「…私も後から逃げる。だから先に行ってて。」

「そんなの…!!無茶だ!絶対に無理だ!!」

「無理じゃない!!」



「なんでたよ!!!だって、こんなになって…」
が、そこで言葉を止める。
血まみれで、生きるか死ぬかの瀬戸際である彼女を置いて、先に行くなんて僕にはできない。


だけど彼女は


「私のこと信じて」

とまっすぐな瞳で言う。

僕はどうすればいいか、立ちすくんでいると

遠くから大人の声が聞こえた。


彼女はまずいという顔をして、血だらけの体を起こし、僕の背中を押す。

「先に行って、待ってて。すぐ追いつくから。」


ニコッと彼女は笑った。


彼女は嘘をつかない。
僕が一番それを知っている。
だけど、彼女が、逃げれたところで生き残れない。


傷が深すぎる。

幼い自分でもわかる。

それならば彼女と一緒に死にたい。

そんな思いが頭によぎる。

だけど、彼女の言葉、目は僕に

生きろ

と言っている。

僕は生きなければそう思った。

僕は背を向けて走った。


全速力で走った。


無我夢中になりながら、涙を流しながら


眩い光の中を走った。

涙で視界が見えなくてなっても走った。


「はぁ…はぁ」


光の先をゆくと、見覚えのある街についた。


「ここ…日本…だ。…東京についたんだ。」


ホッとした瞬間、そこで意識が途絶えた。