屋根まで上がり、窓枠に乗ってこっそりと顔を出す。
そのとき少女がこちらに顔を向けた。
「……ねこさん!」
少し大きめに上がる声に驚き、ぶわっと尻尾がふくらむ。
とたんに前足をすべらせ、またオレは部屋に転げ落ちていた。
「いてえ……」
既視感を感じながらむくりと体を起こしたとき、少女がオレを抱き上げた。
「あのね、ねこさんのおかげで、おばさんとたくさん話せたの……!」
嬉しさにはずむ声に、思わずうつむく。
「そ、そっか。よかったな」
「すごいの。挨拶をしたら、魔法が効いたの」
その言葉に、胸を針で刺したような ツキンとした痛みが走った。