「別にいいじゃない。秀真が恋愛映画観ようが観なかろうが!」
「……お前さ、マジで行く気?」
「え?」
何でそんなことを聞いたのか分からず、首を少し傾けると悠が顔を近づけてきた。
「男と女が暗闇の中ですることって言ったら、アレしかねーだろ。誰にも見えにくくて絶好の場所なんだし?」
「……は?」
私も馬鹿じゃない。
“アレ”が何のことなのか分かる。
「あのねえ!悠じゃあるまいし、秀真がそんなことをするハズがないでしょ!」
チケットを取り返そうとするが、それを上手く交わした悠は、今度は鼻で笑った。
「明里は何も分かってねーのな。いくら秀真みたいに草食系の奴だって所詮は男。いつだって野獣化するもんなんだぜ?」
「――ッ、いいから返せっ!」
睨むように悠の顔を見上げると、観念したのかチケットを机の上に置いた。

