「日比野さんが前から悠のことを好きなのは知ってたわ。好きな人が近くにいたら我慢できずについ手を出しちゃうことはあるし」
「私はっ……」
「でもね。あなたがやったことは決して許されることじゃない。土下座して謝ったらあなたのこと、許してあげてもいいわよ?」
え……土下座……?
「出来心だったとしても、誠意を見せるのが筋ってもんじゃないかしら」
梨花さんは胸の前で両手を組み、“さあ”と言わんばかりに睨み付ける。
「そうよ。それぐらい当然よね!梨花の辛さに比べたら大したことないわよ」
「早く土下座しなさいよ!」
「……っ!」
先輩に肩をグイッと押さえられ、梨花さんの前に跪く形になった。
確かにあたしが梨花さんから悠を奪ったのは事実だ。
でも噂されるようなことはしていないし、ましてやこんな大勢の前で土下座なんて出来ない。
「いい気味」
と私を見て、満足気に言う。
「私の方が悠のことを好きな自信ある!だからあなたに悠は渡さない。悠を今すぐ返して!」
梨花さんが手を振り上げた時だった。
「明里!」
大声で叫びながら教室にやってきた彼に、梨花さんの手が止まった。

