お兄ちゃんはここの卒業生で、祐実は入学してからずっとお兄ちゃん一筋。
それだけあって、祐実にとっては他の何よりも重要なことらしい。
「家に女友達が押し掛けたりしてたけど……」
「え?何それ!どこの女よ!」
「ちょっと、痛いって!」
“許せない!”と言わんばかりの顔を浮かべるのはまだしも、腕の掴む力までは強めないでほしい。
「だけど皆玄関先で追い返したから安心しなって!」
「なーんだ」
やっとの思いで解放され、ホッとひと息吐いた。
「あ、今野くんだよ」
祐実はそう言うと“先行ってるね”と階段を上って行った。

