さっきまでは確かに私を見ていたのに。


いまは彼女の中村さんのことを考えている。




……虚しい。


何でキスされたか分からないけど嬉しかった。


私を見てくれたから。



川島くんが嫌な記憶になりそうだったのを塗り替えてくれたから。




だけど、いま私と目を合わせようとしない川島くん。





「……ごめん。
家まで送るよ」




そう言って私を支えて立ち上がらせると、家まで送ってくれた。


その間、お互い何も話すことはしなかった。



帰る際に、また川島くんが小さく謝ったけど何も返さずに家に入った。




心の中はごちゃごちゃで整理ができない。




ただいろんな感情が渦巻いて、たくさんのことがいっきに起こって疲れたからすぐに眠りについてなにも考えずに済んだのが救いだった。