気が付けば私は保健室のベッドで寝ていたみたいで、あの出来事は夢だったんじゃないかって思った。
でも、手首の傷に絆創膏が貼ってあり、夢じゃないと実感する。
名前、聞いておけば良かったな……。
目を閉じると思い出されるのは、私を守るように前に立った後ろ姿。
王子様がお姫様をエスコートするかのように、私に差し出した手のひら。
私の顔を心配そうに覗き込む優しい瞳。
綺麗な微笑み。
思い出すだけで、顔が熱くなり息が苦しくなる。
こんな感情は初めてなのに、すぐに気づいてしまった。
きっとこの気持ちが、好きってこと。
私は、あの王子様に一瞬で恋に落ちてしまった。