「相田さんがヒマそうだから」

「違います」


ここまで来てかわすのか。
あたしが睨むと、栄さんはさらに理由をあげていく。


「打ち上げだろ」

「違います」

「ちょうどそこにいた」

「栄さん…。ほんと素直じゃない」


もう、言わないだろうと諦めて。
あたしは空になった缶や、ゴミを片付け始める。


「相田さんといると、たのしいから」

「もういいですよ」


栄さんの手にある缶を受け取ろうとした。
しかし、栄さんは缶を足元に置いて。
あたしの差し出した手を握った。


「好きだから」

「え…」


一瞬、何が起こったのかわからなくなった。
握られた手に置いていた視線を上げると、栄さんとまっすぐ目があった。
少し照れたような表情をしている。


「言わされるなんて思わなかったなぁ」


いたずらっぽい表情で笑う。
あ、また新しい一面。
あたし。
栄さんの笑った顔が好きだ。
すごく、好き。


「で、オレにだけ言わせるつもり?」


握られた手に、きゅっと力が入った。
栄さんは期待したような目で見ている。


「言わなきゃわからない?」


あたしがちょっと上から目線で言うと、栄さんは笑った。