掴まれた手を引っ張られ、あたしは倒れこむ。
小西さんの膝に座るようなかたちになった。
そのままぎゅっと抱きしめられる。


「はなしてください」

「好きです」


震えていたテーブルのスマホが静かになった。
ドアの叩かれる音もしない。


「オレのこと、もっと知ってほしい」


小西さんの胸を押し、あたしは顔を背ける。
しかし首筋にキスをされた。
全身総毛立つ。
気持ち悪い。
泣きそう…。


「やめてください」


力の限り抵抗するが、かなわない。
誰か…。
気づいて。
背中のジッパーに手がかかり、下ろされる。
服のなか入れられた手が背中をなでた。


「やだっ」


これから起こるだろうことなんて、考えたくない。
小西さんから離れたいのに上手く力が入らない。
こわい。


「相田さん?大丈夫」


ドアの開いた音とともに、名前を呼ばれる。
入ってきた栄さんはこちらを見て一瞬止まった。


「たすけて…っ」


掠れた声で絞り出すように言った。
栄さんはハッとして目を見開く。
その目で睨みながら、静かにこちらに歩いてきた。
あたしを小西さんから引き離すと、そのままの勢いで小西さんに掴みかかった。