言わなきゃわからない?

小西さんと向かい合う。
視線をあたしの足元に落としていた小西さんは、息を吸って顔をあげた。


「相田さんのこと、好きです。うちの会社に来たときから…。一目惚れでした」


ここまでストレートに言われるとは思っていなかったため、若干おどろいた。


「つきあってください」

「小西さんの気持ちはうれしいんですけど、すみません」


あたしは頭を下げた。
しかし、小西さんは食い下がる。


「つきあってる人がいるんですか」

「いいえ…」

「それなら気に入らないところ、言ってください。直します」

「そういうことじゃなくて…」


どうしよう。
引き下がってくれそうにない。
どう言えばいいんだろう。
今後も取引は続くし。


「気になる人でもいるんですか」

「え…」


そう言われて、栄さんの顔が浮かんだ。
いやいや。
ちがう。
ちがう……。

にぶい音がした。
音のしたほうを向く。
ドアが向こう側に引かれたが、開かない。
カギ、掛けた?


「小西さん、誰か来たみたいなので…」

「理由を聞かせてください」


小西さんは譲らない。
テーブルに置いていたスマホが震えだした。
それと同時に向こう側からドアが叩かれる。


「理由なんて…」


ドアの外が気になる。
チラチラ見ていると、小西さんに手を掴まれた。