「あっ、あのう」
「…………」
若干ビビリながら恐る恐る声を掛けてみたのだが、こんな返事しか返ってこない。まあ、返事が返ってこないと言うよりは、完璧にシカトされているようだなこりゃ。
とにかく、ここで引き下がっては男が廃るってもんなので、再度勇気を振り絞ろうとしていると、
「……ぅん」
何とも艶やかな声が上がった。一瞬ドキっとさせられたが、その少女の顔を除き込むと、どうやら寝息をたてていたらしい。よかった。いきなりあんな色っぽい声をだされても俺が困るってもんだ。
そんな若干の感嘆を抱いた瞬間だった。
いきなり少女が顔を上げ、覗き込んでいた俺の目の前に少女の顔がある。
と、思った俺は次の瞬間宙を舞っていた。何だ? 今度は何が起こった? 冷静に判断しようとするが、既に上下の感覚がなく、上を向いているのか、下を向いているのか考えがまとまる前に激しくどこかに叩きつけられた。着地してから少し滑っていったということは、ものすごい力が加えられたってことだよな。
幸い頭を打つなどの重症ではなかったので、コンクリートで擦った足を引きずりながら、痛てえなこの野郎! と起き上がると、さっきまで俺がいたところが十メートル程先に見えるじゃないか。おいおい、こんなにすっ飛ばされてよく死ななかったもんだ。普通なら死亡フラグが立つくらいにヤバかったんじゃないのか?
しかし、どうして俺は人間大砲のように滑空していた? 何かがぶつかってきたとか? いやいや違うな。まさか、あの少女に突き飛ばされたとか? まさかな。と言って先程の少女を見つけようとするが、さっきまで居た場所は既にもぬけの殻だった。
「……あれ? おかしいな」
頭をかいたその時だ、上空に何かの気配を感じ、咄嗟に見上げた俺の視界に飛び込んできたのは――。
少女だった。さっきまでフェンスに寄り掛かっており、可愛い寝息をたてていた少女が、空中で両腕を振りかぶり飛翔しているじゃないか。夕日に反射した何かが眩い光を発している。ああ、なんだか幻想的な光景だなと、呆然としながら見守る事しかできい俺と、時間が止まったかのように空中にいる少女。だが、次の瞬間に俺は現実に引き戻されることとなった。
少女は振りかぶっていた何かを俺に目掛けて振り下ろす。その顔は何の表情も読み取れず、まるで蚊を叩き潰すような何でもない動作のようだった。
「くっ!」
少女が振りかざした物が俺に触れようかとした刹那、瞬間的に身の危険を感じた俺は咄嗟に隣の空間に飛び込んだ。着地を考えていなかったものだから、派手に膝を擦り剥いてしまったが、そんな事を言っている暇はない。振り返った俺が目にしたのは、女の子には似合う筈もない長い何かを振りかざした格好のまま片膝をついていた少女だった。
少女は、ゆっくりと首を捻り、床にひれ伏している俺を見つけると、これまたゆっくりと立ち上がって、華奢な体を揺らしながらこちらに向かって足を踏み出した。
「ちょっ、ちょっ」
やっとの思いで喉から振り絞ったが、まったくもって言葉になっていなかった俺の必死の叫び声も少女には聞こえていないのか、特に歩みをやめる気配はない。
俺は、必死になって這い蹲っていた体に速攻で命令し、立ち上がろうと膝を立てると、少女が持っていた物が行き手を阻むかのように掲げられたのだが、目の前にあるそれは紛れもなく日本刀。通常日本刀ってのは七十センチ位だと何かの本で読んだことがるのだが、俺の目の前で鈍い輝きを放っている鋼はゆうに一メートルを越えており、文字通りの長刀だった。
しかも、さっきまで俺が居た場所が結構な深さまで抉られてるってことは、その刀マジもんじゃねえか!
「…………」
少女は無言のまま俺を見下ろしている。その表情は、無表情という比喩がぴったりの何の意思も感じられず、俺をゴキブリや何やらと思っているのかもしれない。何だ? 俺が起こしたのがそんなにマズかったのか? それで不機嫌モードなこの子は八つ当たりをしているだけなんだよな? そうだよな? たのむ、そうであってくれ!
そんな俺の思惑とは裏腹にゆっくりと少女の腕が上がる。なんだこりゃ、もお完全に意味がわからん。もうしかして、俺は死ぬとか? いやいや冗談がキツイぜ。そうだ! これはドッキリなんだ。誰かが仕掛けた罠に違いない。今もどこかで、俺を見て笑ってんだろう。そうに違いない。
俺が現実逃避している間にも彼女は何の感情も見いだせず、一瞬視線が鋭くなると同時に、腕を振りかぶった。長刀が空を切る音と、もう思考停止状態でそれをぼんやりと眺める事しかできない俺がそこにいた。
あと少しで、スイカ割のように俺を構成するパーツが飛び散るっていう間際、
「あっ、ちょっとタンマ」
なんとも緊張感のない声が聞こえてきた。
「…………」
若干ビビリながら恐る恐る声を掛けてみたのだが、こんな返事しか返ってこない。まあ、返事が返ってこないと言うよりは、完璧にシカトされているようだなこりゃ。
とにかく、ここで引き下がっては男が廃るってもんなので、再度勇気を振り絞ろうとしていると、
「……ぅん」
何とも艶やかな声が上がった。一瞬ドキっとさせられたが、その少女の顔を除き込むと、どうやら寝息をたてていたらしい。よかった。いきなりあんな色っぽい声をだされても俺が困るってもんだ。
そんな若干の感嘆を抱いた瞬間だった。
いきなり少女が顔を上げ、覗き込んでいた俺の目の前に少女の顔がある。
と、思った俺は次の瞬間宙を舞っていた。何だ? 今度は何が起こった? 冷静に判断しようとするが、既に上下の感覚がなく、上を向いているのか、下を向いているのか考えがまとまる前に激しくどこかに叩きつけられた。着地してから少し滑っていったということは、ものすごい力が加えられたってことだよな。
幸い頭を打つなどの重症ではなかったので、コンクリートで擦った足を引きずりながら、痛てえなこの野郎! と起き上がると、さっきまで俺がいたところが十メートル程先に見えるじゃないか。おいおい、こんなにすっ飛ばされてよく死ななかったもんだ。普通なら死亡フラグが立つくらいにヤバかったんじゃないのか?
しかし、どうして俺は人間大砲のように滑空していた? 何かがぶつかってきたとか? いやいや違うな。まさか、あの少女に突き飛ばされたとか? まさかな。と言って先程の少女を見つけようとするが、さっきまで居た場所は既にもぬけの殻だった。
「……あれ? おかしいな」
頭をかいたその時だ、上空に何かの気配を感じ、咄嗟に見上げた俺の視界に飛び込んできたのは――。
少女だった。さっきまでフェンスに寄り掛かっており、可愛い寝息をたてていた少女が、空中で両腕を振りかぶり飛翔しているじゃないか。夕日に反射した何かが眩い光を発している。ああ、なんだか幻想的な光景だなと、呆然としながら見守る事しかできい俺と、時間が止まったかのように空中にいる少女。だが、次の瞬間に俺は現実に引き戻されることとなった。
少女は振りかぶっていた何かを俺に目掛けて振り下ろす。その顔は何の表情も読み取れず、まるで蚊を叩き潰すような何でもない動作のようだった。
「くっ!」
少女が振りかざした物が俺に触れようかとした刹那、瞬間的に身の危険を感じた俺は咄嗟に隣の空間に飛び込んだ。着地を考えていなかったものだから、派手に膝を擦り剥いてしまったが、そんな事を言っている暇はない。振り返った俺が目にしたのは、女の子には似合う筈もない長い何かを振りかざした格好のまま片膝をついていた少女だった。
少女は、ゆっくりと首を捻り、床にひれ伏している俺を見つけると、これまたゆっくりと立ち上がって、華奢な体を揺らしながらこちらに向かって足を踏み出した。
「ちょっ、ちょっ」
やっとの思いで喉から振り絞ったが、まったくもって言葉になっていなかった俺の必死の叫び声も少女には聞こえていないのか、特に歩みをやめる気配はない。
俺は、必死になって這い蹲っていた体に速攻で命令し、立ち上がろうと膝を立てると、少女が持っていた物が行き手を阻むかのように掲げられたのだが、目の前にあるそれは紛れもなく日本刀。通常日本刀ってのは七十センチ位だと何かの本で読んだことがるのだが、俺の目の前で鈍い輝きを放っている鋼はゆうに一メートルを越えており、文字通りの長刀だった。
しかも、さっきまで俺が居た場所が結構な深さまで抉られてるってことは、その刀マジもんじゃねえか!
「…………」
少女は無言のまま俺を見下ろしている。その表情は、無表情という比喩がぴったりの何の意思も感じられず、俺をゴキブリや何やらと思っているのかもしれない。何だ? 俺が起こしたのがそんなにマズかったのか? それで不機嫌モードなこの子は八つ当たりをしているだけなんだよな? そうだよな? たのむ、そうであってくれ!
そんな俺の思惑とは裏腹にゆっくりと少女の腕が上がる。なんだこりゃ、もお完全に意味がわからん。もうしかして、俺は死ぬとか? いやいや冗談がキツイぜ。そうだ! これはドッキリなんだ。誰かが仕掛けた罠に違いない。今もどこかで、俺を見て笑ってんだろう。そうに違いない。
俺が現実逃避している間にも彼女は何の感情も見いだせず、一瞬視線が鋭くなると同時に、腕を振りかぶった。長刀が空を切る音と、もう思考停止状態でそれをぼんやりと眺める事しかできない俺がそこにいた。
あと少しで、スイカ割のように俺を構成するパーツが飛び散るっていう間際、
「あっ、ちょっとタンマ」
なんとも緊張感のない声が聞こえてきた。

