さてさて翌日、昨日体育館裏で言われた突然漫画ちっくな世界に放り込まれてしまい、心の整理も自らの役割も納得せず、どうしたもんか登校する俺なのだが、教室に入った瞬間、
「さあ、今日から実地訓練よ」
「朝から元気だなあ」
教室の入り口で巫部が仁王立ちしている巫部の横を何事もなかったかのようい通り過ぎようとする俺の肩がガシっと掴まれた。
「あんた、部長である私の言うことを聞けないってなら強制退部だからね」
「是非そうしてくれ。というかそんな訳のわからん部活に入ったつもりはない」
「うるさいわね。おとなしく私についてくればいいのよ。そんな訳でいい? 夕凪さん」
「はい、いいですよ。よろしくお願いします」
仰々しくお辞儀をする麻衣なのだが、この適応能力が羨ましすぎる。
そんなこんなで授業が一通り終了した。だが俺はこのまま手を拱いているだけではない。こんな面倒なことに時間を割いている場合じゃないんだ。先日も逃げ切れたってことは、今日もできるはず、がんばれ俺! と言わんばかりに、担任教師がホームルームの終了を告げ、クラス委員長が起立、礼、と言った所でミッションスタートだ。鞄を掴むと一目散にドアへ向かい、開けた瞬間、
「あんた、何やってんのよ」
巫部が仁王立ちで睨みを効かせていた。
「……」
一瞬で凍りつく俺。何だ? 何が起こったんだ? たしか、俺はクラスの誰よりも早くドアに到達したと思ったのだが、何故巫部が目の前にいるんだ? こららやまたまったくもってデジャヴュだなと、一人感心している俺のネクタイを掴むと、巫部は弾んだような声で廊下を歩き出した。
「さあ、行きましょう」
「あっ、あのちょっと……」
「なによ」
「いっ、いやあ、ちょっと俺、今日は用事があるんだけどなあ」
「へー、で?」
「で、とは?」
「で、何なのよ。この私が声を掛けてあげてるんじゃない。ありがたく思いなさい。さあ、行くわよ」
巫部に引きずられながら昨日ゆきねに待ち伏せされていた体育館裏へとやってきた。
「さっ、今日はここを探すわよ」
「探すって何をだよ」
巫部に引きずらられた事により完全に締まってしまったネクタイを少し緩めながらぶっきらぼうに言ってやると、
「決まってるじゃない。もう一つの世界をよ」
本気もんのアホだなこいつ。俺の同情なんて、甚だ感づいていない巫部は肩越しに俺の後に視線を向け、
「そんな訳でいい? 夕凪さん」
「はい、いいですよ」
咄嗟に振り向くと、麻衣がにこやかな笑顔で立っていた。って、何で麻衣がここにいるんだよ?
「もう、急に教室を飛び出して行くんだもん、ビックリしちゃったよ」
いつものおっとりした表情で言葉を発する麻衣なのだが、何故この子はこの状況を受入れているのだろうか。
「これで役者は揃ったわね。じゃあ、早速行動開始!」
巫部は腕を捲くる仕草をすると、体育館の壁やら脇の茂みやらを探しはじめた。しかし、本当にこいつは、もう一つの世界なんてものを信じているのかね。そんなもんある訳ないだろ。もし、あったとしてもこんな所にあるはずはない。時間の無駄なんじゃないのか?
しかし、昨日ここでゆきねに言われた事を思い返すが、考えれば考える程荒唐無稽過ぎる。本当に俺は昨日ここで話を聞いたのだろうか。まさか夢だったとか? さりげなくゆきねの痕跡を伺うが、当然のようにそんなものはないのだった。
しかし、巫部の話しと言い、ゆきねの話しと言い、両方ともパラレルワールド的な世界の話だったような気がするな。最近はそんな話が流行ってるのかねえ?
しかし、まあしょうがない。巫部に捕まっちまった以上は適当に与えられたミッションをこなすしかないのか。
「ねえねえ、もう一つの世界なんてどんなところなんだろうね」
隣では麻衣が目を輝かせているが、そんなもん俺が知るか。もう一つ世界だ何だってのはくだらない都市伝説にもならないぞ。だがしかし、ここで否定しようものなら、なんとなくこの先もずっとストーキングされるような気がする。ここは、適当に協力するフリでもしていればいいかな。どうせすぐに飽きるだろうし、やれやれ付き合ってやるか。
捜索開始後二時間が経過したが収穫は一切なしだ。まあ、そうだろうな。俺自身何を探しているのかまったく見当がつかないのだから。廃棄された机の中や茂みの中、色々な所を一応覗いてみるが、至極普通で、そこに何かがあるという訳ではなかった。
「うーん。ないわねー」
「なあ、今日はもうこの位にしとかないか?」
巫部は捜索開始時と同じように地面にはいつくばり、石をどけてみたり、側溝の蓋を開けているが、太陽が傾き始め、空が朱色に染まりかかってきた。このままの勢いじゃ夜まで探すなんてことになりかねないからな。
俺が発した言葉を完全にスルーしていた巫部だが、不意に立ちあがると、
「そうね。今日はこの位にしておきましょう。あっさり見つかっちゃったらなんの面白みもないものね。続きは明日でいいわよ。解散!」
そう言うと、巫部は踵を返し校舎へと向かって歩き出した。
「何なんだよあいつは」
溜息しか出ない俺に対し、何の疲弊もしていないような麻衣はいつもと変らない口調で微笑みかけた。
「見つからないものはしょうがないよ。ねえ、私たちも帰ろっか」
「なんで麻衣はそんなに状況を受け入れてるんだ? せっかく高校生になったってのに、あんな訳のわからん女に協力する事になっちまって。これからが思いやられるぜ」
「そう? 私は結構楽しいけどな。放課後にもう一つの世界を探すなんて、なんかロマンチックじゃない? きっと見つかったら楽しいことがあるよ」
あっけらかんと言い切るが、何故そこまでポジティブシンキングなんだ? 俺には到底理解できないね。
「さあ、今日から実地訓練よ」
「朝から元気だなあ」
教室の入り口で巫部が仁王立ちしている巫部の横を何事もなかったかのようい通り過ぎようとする俺の肩がガシっと掴まれた。
「あんた、部長である私の言うことを聞けないってなら強制退部だからね」
「是非そうしてくれ。というかそんな訳のわからん部活に入ったつもりはない」
「うるさいわね。おとなしく私についてくればいいのよ。そんな訳でいい? 夕凪さん」
「はい、いいですよ。よろしくお願いします」
仰々しくお辞儀をする麻衣なのだが、この適応能力が羨ましすぎる。
そんなこんなで授業が一通り終了した。だが俺はこのまま手を拱いているだけではない。こんな面倒なことに時間を割いている場合じゃないんだ。先日も逃げ切れたってことは、今日もできるはず、がんばれ俺! と言わんばかりに、担任教師がホームルームの終了を告げ、クラス委員長が起立、礼、と言った所でミッションスタートだ。鞄を掴むと一目散にドアへ向かい、開けた瞬間、
「あんた、何やってんのよ」
巫部が仁王立ちで睨みを効かせていた。
「……」
一瞬で凍りつく俺。何だ? 何が起こったんだ? たしか、俺はクラスの誰よりも早くドアに到達したと思ったのだが、何故巫部が目の前にいるんだ? こららやまたまったくもってデジャヴュだなと、一人感心している俺のネクタイを掴むと、巫部は弾んだような声で廊下を歩き出した。
「さあ、行きましょう」
「あっ、あのちょっと……」
「なによ」
「いっ、いやあ、ちょっと俺、今日は用事があるんだけどなあ」
「へー、で?」
「で、とは?」
「で、何なのよ。この私が声を掛けてあげてるんじゃない。ありがたく思いなさい。さあ、行くわよ」
巫部に引きずられながら昨日ゆきねに待ち伏せされていた体育館裏へとやってきた。
「さっ、今日はここを探すわよ」
「探すって何をだよ」
巫部に引きずらられた事により完全に締まってしまったネクタイを少し緩めながらぶっきらぼうに言ってやると、
「決まってるじゃない。もう一つの世界をよ」
本気もんのアホだなこいつ。俺の同情なんて、甚だ感づいていない巫部は肩越しに俺の後に視線を向け、
「そんな訳でいい? 夕凪さん」
「はい、いいですよ」
咄嗟に振り向くと、麻衣がにこやかな笑顔で立っていた。って、何で麻衣がここにいるんだよ?
「もう、急に教室を飛び出して行くんだもん、ビックリしちゃったよ」
いつものおっとりした表情で言葉を発する麻衣なのだが、何故この子はこの状況を受入れているのだろうか。
「これで役者は揃ったわね。じゃあ、早速行動開始!」
巫部は腕を捲くる仕草をすると、体育館の壁やら脇の茂みやらを探しはじめた。しかし、本当にこいつは、もう一つの世界なんてものを信じているのかね。そんなもんある訳ないだろ。もし、あったとしてもこんな所にあるはずはない。時間の無駄なんじゃないのか?
しかし、昨日ここでゆきねに言われた事を思い返すが、考えれば考える程荒唐無稽過ぎる。本当に俺は昨日ここで話を聞いたのだろうか。まさか夢だったとか? さりげなくゆきねの痕跡を伺うが、当然のようにそんなものはないのだった。
しかし、巫部の話しと言い、ゆきねの話しと言い、両方ともパラレルワールド的な世界の話だったような気がするな。最近はそんな話が流行ってるのかねえ?
しかし、まあしょうがない。巫部に捕まっちまった以上は適当に与えられたミッションをこなすしかないのか。
「ねえねえ、もう一つの世界なんてどんなところなんだろうね」
隣では麻衣が目を輝かせているが、そんなもん俺が知るか。もう一つ世界だ何だってのはくだらない都市伝説にもならないぞ。だがしかし、ここで否定しようものなら、なんとなくこの先もずっとストーキングされるような気がする。ここは、適当に協力するフリでもしていればいいかな。どうせすぐに飽きるだろうし、やれやれ付き合ってやるか。
捜索開始後二時間が経過したが収穫は一切なしだ。まあ、そうだろうな。俺自身何を探しているのかまったく見当がつかないのだから。廃棄された机の中や茂みの中、色々な所を一応覗いてみるが、至極普通で、そこに何かがあるという訳ではなかった。
「うーん。ないわねー」
「なあ、今日はもうこの位にしとかないか?」
巫部は捜索開始時と同じように地面にはいつくばり、石をどけてみたり、側溝の蓋を開けているが、太陽が傾き始め、空が朱色に染まりかかってきた。このままの勢いじゃ夜まで探すなんてことになりかねないからな。
俺が発した言葉を完全にスルーしていた巫部だが、不意に立ちあがると、
「そうね。今日はこの位にしておきましょう。あっさり見つかっちゃったらなんの面白みもないものね。続きは明日でいいわよ。解散!」
そう言うと、巫部は踵を返し校舎へと向かって歩き出した。
「何なんだよあいつは」
溜息しか出ない俺に対し、何の疲弊もしていないような麻衣はいつもと変らない口調で微笑みかけた。
「見つからないものはしょうがないよ。ねえ、私たちも帰ろっか」
「なんで麻衣はそんなに状況を受け入れてるんだ? せっかく高校生になったってのに、あんな訳のわからん女に協力する事になっちまって。これからが思いやられるぜ」
「そう? 私は結構楽しいけどな。放課後にもう一つの世界を探すなんて、なんかロマンチックじゃない? きっと見つかったら楽しいことがあるよ」
あっけらかんと言い切るが、何故そこまでポジティブシンキングなんだ? 俺には到底理解できないね。

