「わたしもそう思ってたところ。
仕事、頑張ってね。今まで楽しかった。」




浮気した挙句、
31歳にもなった私を振るなんて、
情け容赦なくて最低な君だけど、

愛していました。



くしゃっとした笑顔とか、
朝起きてすぐの少し掠れた声。
ベットの隅に追いやられた、シワの入ったシャツを着るときの背中。
半歩後ろから見た、半歩前を歩く君の顔。


全部、ぜんぶ。







「私、幸せになるから。
君も、そのスーツの香りの"誰かさん"のことは、幸せにしてあげてね。」






私が、大好きな君に言えた、
最大限の嫌味を込めて。

最後に
瞳からこぼれ落ちてしまった一粒の雫から、
君は何か思ってくれるだろうか、
そんな期待を込めて。









一歩

-fin-