料理を食べ終え、飲み物を片手に会場の隅っこに立っていると、一人の男性が話し掛けてきた。

「初めまして、エステル様。自分はカプリスと言います。」
カプリスは優雅な動作でエステルの手を取ると、手の甲にそっと口付けをした。

「初めまして、カプリス。えっと、どうぞエステルと呼んでください。」

カプリスの行動に赤面しながらも、エステルは頭を下げた。


「そんな畏れ多い事……しかし、貴女がそう仰るのならそう呼びましょう。」
カプリスは一瞬迷ったけれど、了承してくれた。


それから、カプリスと二人で喋っていたエステルだが、急に酷い寒気に襲われて倒れそうになった。

「エステル!?どうされました?」
エステルを支えたカプリスは、慌てた様子で尋ねた。

エステルはそれに答えることはなく、頭を押さえて震えていた。


カプリスはエステルを会場から連れ出し、そばにある長椅子に座らせた。


「ゲリールを呼んできます。少しだけ、待っててもらえますか?」
カプリスの質問にエステルが頷いたのを確認すると、カプリスは急いで会場に戻っていった。