そんなこんなしているうちに授業の時間になった。
昨日、帰国したばかりというのもあり、疲れはとれてなかったけど、また生徒のみんなと話せるのは本当に楽しみだった。
この塾は基本的に担任制なのだが、講師をやめた方がいて、私が今日から引継ぐこととなった。
テキストをぼーっと眺めていると、元気よく隣に座りこんできた男子がいた。
「あーわりぃ、先生。遅れちった。なんかさ、部活が長引いてさ!!ありえねーっつの。ってか、篠塚先生久しぶりじゃん?」
あまりにも突然いろいろ言われてきょとんとしてしまった。
「オレのこと覚えてんの?」
覚えてた。覚えてるに決まってる。上川中学、2年生、浜野健君。この塾の生徒の大半が上川中の生徒だ。しかも、男子も女子も良い子で可愛い子揃い。中でも浜野君は、顔が私のタイプだった。だからといって、どうするつもりもないけれど。
彼の授業を今まで持っていなかったので、関わりは今日までほぼなかった。
「当たり前じゃない、覚えてるよ。可愛い生徒だもん。」
「本当かよー。まぁ別にいいや。これからヨロシクな。授業やろうぜ。」
顔がタイプの彼のペースに巻き込まれて、私の帰国後初仕事は無事に終わった。