浜野君と付き合うことになった。

でも、私は「付き合う」の意味を深く考えていなかったかもしれない。
とりあえず浜野君の隣にいることを許されたのだと思う。
翌日、塾の帰りに私を家まで送ってくれることになった。
もちろん車なんてない。
浜野君の自転車の後ろに乗り、手をギュッと腰に回す。
私はドキドキした。自分が中高生の時にこんなことしたことなかったから。
私はドキドキしてるのに、浜野君は平然としてた。
自転車を降りて、横に並んで歩いていたら浜野君が口を開いた。
「なんか、お前といてもドキドキしねーや」
そしていつもみたくニタッと笑う。私はこの笑顔に弱かった。でも、同時にショックだった。やっぱり私じゃダメなのだろうか。ふざけて私も言う。
「じゃあさ、付き合ってるっぽく手とかつないでみちゃう!?」
…馬鹿みたい。二十歳なのに焦ってる。情けない。かっこわるい。自己嫌悪に陥ってると、
「今は自転車があるから、また今度ね」
って耳元で囁かれてしまった。
私は真っ赤になる。でも夜だから気づかれなかった。
家の前まで来てもらうのが照れくさくて、家のそばの坂の上でバイバイしようとしたら、浜野君が少し拗ねてた。そんな君も愛しかった。
帰り際に浜野君が叫んだ。
「オレ、親に携帯没収されたから、メールできねえから!オレが連絡するまで待ってて!」
私は黙ってうなずいた。