「さ、桜木っ!!」
「ん?…あ、野々くん。部活お疲れ様。」
「お、おう…サンキュ。桜木もお疲れ。今日も大変だっただろ?」
私は桜木さゆみ-サクラギ サユミ-。この鞍馬学園-クラマ ガクエン-のサッカー部のマネージャーをしています。そして今私と話している人は、クラスメイトで同じサッカー部の野々倭-ノノ ヤマト-くん。未来のキャプテンとして頼られている副キャプテンなの。
「ううん、野々くん達の方がすごく大変だったでしょ。マネージャーの私なんか野々くん達に比べたら全然平気。だから大丈夫だよ!」
「__んなことねぇよ!!」
ビクッ!
「えっ?」
「桜木がいつも俺たちのサポートを一生懸命頑張ってくれているから俺たちは練習にだけ打ち込めるんだ。俺たち皆桜木に感謝しているんだよ…!」
「………」
「……あっご、ごめん。急に怒鳴るような言い方して。」
「えっ⁉ぜ、全然!!私怒ってないよ?むしろそんな風に思ってくれてるなんて思わなかったから、すごく嬉しい。ありがとう…!」
「_っ!~~っ~__」
「……………」
「……………」
「……?…野々くん?」
野々くんは顔を下に向けて固まってしまった。
どうしたんだろう?
「おーい、野々くん。どうしたの?気分でも悪い?」
私は心配になって、下から野々くんを覗き込みながら声をかけた。
「_っ__!…あ、あの、さ…」
「何?」
さっきまで野々くんの視線は下を向いていたのに、今は真っ直ぐに私を捉えている。
顔がすごく赤い。熱でもあるのかな…?
「お、おおおお俺、桜木にい、いいい言いたいことがあってっ!!」
「ん?なーに?」
すごい噛んでるけど大丈夫かな?
「___っ__お、俺!ずっ、ずっと桜木のことが…好きでした!!」


「………えっ!?」
「あ、いや…でした、じゃなくて、好きです‼大好きです!!俺と付き合って下さいっ___!!」
「え、え…えーーー!?じょ、冗だ…__っ!!」
野々くんは決して嘘を言っている訳じゃない。ただ、冗談なのではないかと思ってしまう……だけどそれは違うんだ。
野々くんは本気で私のことを想って勇気を出して好きと言う言葉を口にしているんだと野々くんを見て分かった。
「え、えっと、あの…わ、私は………」
野々くんの方が何倍も何十倍も緊張しているはずなのに、私は初めて告白される恥ずかしさと野々くんの真剣な眼差しで上手く返事が出来ない。
「……私、は…___」


「…やーーーまーーーとーーーーー!!!」
ビクッ!!??
「倭っ!!帰るぞっ!!どこにいるんだーーーい!!」
「…キャプテンだ…」
「…そうみたいだね。」
「「………」」
「桜木。」
「な、何?」
「さっきの返事なんだけど…」
「え、あっそうだったね。えっと…」
「__また、今度でいいよ。」
「え…?」
「急にあんなこと言われても困ると思うし。それに今、桜木すごく頭の中グルグルしてるだろ?そんな状態で早く返事してなんて、言えないよ。」
「野々くん…」
「ちゃんと頭の中整理して、答えが出たらその時、返事…貰えるかな?俺いつでも待つからさ。」
「…うん。ありがとう、野々くん。」
「…っ__!……… じゃ、じゃあ俺先に帰るね。桜木も気を付けて帰れよ。」
「うん、また明日ね。」
「おう!……___」
野々くんは右回りをしてそのまま止まってしまった。
「?…どうしたの?」
「…桜木。」
「何?」
「__…良い返事、聞けることを楽しみにしてるっ!!」
「__っ!!」
「また明日!」
「………」
野々くんはこれでもというくらい満面の笑みを浮かべて帰っていった。


___初めて告白をされました。
少女漫画で主人公が告白したり、されたりするシーンを思い出した………うん、舐めてました少女漫画。初めて告白をされて、すごく緊張して混乱した。もっと冷静に出来るものとばかり思ってた。さすが少女漫画…いや、少女漫画様。恐れ入りました。
こんな私は今まで恋をしたことが無かった。
友達は目が合っただけでドキドキするとか、その人のことしか考えられないとか言ってたけど私にはよく分からなかった。
だけど一瞬、野々くんのあの笑顔に心臓を撃ち抜かれたような気持ちにはなった。
__これは恋なのかな?
もちろん友達として野々くんのことは好きだけど、男の子として好きなのかな?
…私、野々くんのことどう思ってるんだろ?


「___姉ちゃん。」
考え事をしていると、後ろから馴染みのある声が聞こえた。
「…太陽?」
同じサッカー部で、私が小学校3年生の時に隣に引っ越してきた神崎太陽-カンザキ タイヨウ-。私の1コ下で幼なじみではないけど、姉弟のように育ってきた可愛い弟のような存在。まぁ私より身長が高いのがちょっと(7センチの差)気に入らないけど。
「どうしたの?片付けもしないでぼーっと突っ立って。皆帰っちゃったよ。」
「え…あー!!本当だ!」
「…早く帰ろうよ。」
「ご、ごめん!すぐ片付けるからちょっとそこで待っててね!」
うわー。野々くんのことがあってすっかり忘れちゃってたー!
「家が隣同士なんだから、先に帰る理由がないよ。待つから怪我しないようにね。」
「うん!ありがとうっ!」
やっちゃったー。太陽が声かけてくれなかったらもっと遅く帰ってたかも___……まさかとは思うけど、さっきの、見られてた…?
ど、どうしよう。もし太陽に見られてたら私、恥ずかしくて死んじゃいそうだよ…うぅ、顔が熱い。
「……ところでさ、姉ちゃん。」
「な、何?」
「さっきの野々先輩の告白どうすんの?」
「へっ!?!?え、ってキャー‼」
太陽の急な質問に驚いて足を滑らせてしまった。
転けちゃう_っ!!
私は覚悟を決め目を思いっきり瞑った。………あれ、痛くない?
「…__だから、怪我しないようにねって言ったろ?」
「っ!!」
太陽は私が転けないように後ろから抱き締めてくれていた…んだけど、
「…あ、ありがとう、助けてくれて。もう離していいよ?」
さっき耳元で話しかけられて、足に力が入らないでいた。
「何言ってんの?今足に力入ってないじゃん。このまま離すと姉ちゃん、確実に怪我するよ?」
ギュ。
「_っ!…だ、大丈夫だよ?平気だからは、離して…?」
わざとなのか太陽はさっきよりも力を入れて私達はさらに体が密着した。当然太陽の声も近くなるわけで。
「…ダーメ。」
「_____っ!!!」
何?体に電気が走ったみたい。心臓がバクバクなってる。何で?私どうしちゃったの??
「姉ちゃん。」
だーかーらー!耳元で話さないでよー!!!
「……………」
「…?た、太陽?」
「…野々先輩の告白、受けるの?」
「え?」
「そんなに野々先輩のことが好き?」
「え、ちょっと待って…!」
私は無理矢理、太陽と向かい合った。
「いつから野々先輩のこと好きだったの?」
「太陽…!」
「というか野々先輩のどこを好きになったの?」
「太陽!話を聞いて…!」
「かっこいいところ?爽やかなところ?あー、もしかしてサッカーが上手いところ?」
「ねぇ太よ…_「質問に答えろよ___っ!!!!!」」
ビクッ!!??
「ハァ…ハァ…ハァ……」
「た、いよ、う…?」
「…っ__俺ずっと姉ちゃんのこと見てきたのに。誰よりも、どの男よりも絶対俺が先に姉ちゃんのこと好きになったのに。」
「っ!!」
「今だってその気持ちは変わらねぇ__…なのに、何で野々先輩なんだよ………俺じゃダメなのかよ__っ!!」
「っ!!…太陽あのね、私別に野々くんのこと…「渡さない。」…え?」
「姉ちゃんを他の男には絶対渡さない…!!」
「だから私は…んっ!?」


太陽はいきなり私にキスをしてきた。それも深いキスを。
「…んん、…ふぁ……っ…た、たい…よ、う…んっ……」
初めてのキスだった私は何が何だかよく分からなかった。
そして太陽は私を逃がさないとばかりに腕に力を入れ、深いキスがもっと深く深くなった。
「…ん…ふぁ……んっ……」
…なんでだろう。初めてのキスなのに、嫌じゃない。むしろすごく幸せな気持ち。私おかしくなっちゃったのかな?
「…ん…姉、ちゃん……」
ドキ___あ、そっかぁ…私、太陽のこと好きなんだ。
弟みたいに思ってたけど、いつの間にか太陽のこと男の子として見て、恋をしてたんだ。
そう実感すると私は太陽の気持ちを受け止めるように抱き締め返した。
「…!?ね、姉ちゃ…ん?」
太陽は私の行動に驚いて目をぱちくりさせている。
「太陽。」
もう恋が分からないなんて言わない。
「私もね、」
だって。
「ずっとずーっと太陽が好きっ!」
「___っ!!??」
「へへっ。」
こんなにも好きな人がいるんだもん‼