『はぁ?別に絵なんか描けなくても困らないし、特にもならないからいいじゃん?』
すこしムスッとして彼が言った。
え。……怒ってる?
「えっと、そうだね……ごめんなさい。」
バカにしたわけじゃ無かったのだけれど、嫌な気持ちにさせたのなら悪かったな。
『ねぇ、名前何て言うの?』
「え?」
『あんたの名前。聞いてなかったから。』
「あぁ、えっと、桜井美琴です。」
『みことかぁ、ならみっちゃんだね』
「ん?……みっちゃん?」
『みことだからみっちゃん。よろしくね。』
彼はニコッと笑うと、ふぁあっとあくびをしながら『眠いからどっかあったかい所で寝よーっと』と言い席を立った。
「…………よろしくお願いします」
気まぐれな人だなぁと思った。
きっと止めても聞かないんだろうと思ったから止めなかった。
ただドアの方へ歩いていく彼を見ていた。