小さい頃の風景はいつも、柔らかくにじんだ色合いだった。

「やーい」

「やーい 泣き虫ー!」

「泣き虫りーう!」

「璃海の目は青いから、すぐ水が出てくるやーい」

「………」

からかう声
笑う声

それに答えるのは、弱く 弱く かすかな声。

「……う…もん」

笑う声にかき消されても
それでも息を吸い込んで

「ちが…もん」

聞こえねーよ と囃す声

そしたらもう一度

「ちがうもん……っ」