「翼!!斗侑真君!!」


声がした方に顔を向けると楓の
お義母さんが大きな荷物を抱えて
歩いて来ている。


「あっ!!おばあちゃんだ!!」


翼が嬉しそうにお義母さんの元に
走って行く…。


翼にとってただ一人のおばあちゃん。


そう言えば翼は幼稚園の
年長の頃に行事である敬老参観日の朝に突然言った事に俺と楓が驚いた事があった。


「僕…パパのおばあちゃんに
会った事があるよ。
夢でだけどね。(笑)とっても優しかったんだよ!!」


俺と楓は顔を見合わせてしまった。


今までにそんな事は一言も言った事なんて無かったのにどうして急に思い出した様に話し出したのかわからない。


「翼.その夢はいつ見たの?」


楓の問いに翼は無邪気に笑って言ったんだ。


「ママのお腹にいる時だよ!!」


俺と楓は言葉が出なかった。


俺が死の淵をさ迷っていた時に
体験した不思議な出来事。


俺も確かにお袋と出会った。


翼の中で夢として残るお袋は
優しいおばあちゃん。


説明しきれない不思議な出来事
だけど翼が覚えていてくれた事が
嬉しかった。