浴室から出た後は、オレはすぐに部屋着に着替えた。部屋着と言っても、長袖Tシャツと七部丈のズボンのパジャマ風の服。

着替えてから気づいたが、ルナは他の服を持っていない。
仕方なく、着替え部屋の端の方にあるタンスの中からオレのTシャツを渡した。

ルナはそれを受け取り、着る。

「(なんだかこれって、彼シャツ……みたいな感じが……。って、乙女か!?)」

一人漫才的なものを頭の中で一人繰り広げていることに馬鹿馬鹿しく感じる。
しかし、それっぽい。

やっぱり、ルナにはオレの服はぶかぶかで、少し可愛いかも、なんて思ってしまう。

その後、すぐに歯磨きをし、母さんに声をかけると、二人で階段を上がった。
もちろん、ルナは歯磨きの仕方をすぐに覚えた。

何故階段を上がったかというと、二階にオレの部屋があるからだ。今日はまだ不安だし、とりあえず一緒の部屋で寝ることにした。
部屋数が少ないわけではない。

若干安心しきっている部分があるが、オレたちは追われている。それが誰なのかがわからないため、とても危険な状況。

未だ消えない不安を抱えながら、廊下を歩く。さっき階段を上り終えて、右に曲がった。そして、手前から2番目の部屋のドアを開ける。

青と白を基調とした家具。オレの好きな色。平和という言葉からかけ離れた日常を送っているオレにとって、平和的な色は癒しだ。

そんな日常が今日からさらに悪化したし……。でも、ルナは悪くない。だから、今後ルナを責めることはない。

左奥にあるベッドに寄ると、オレたちはそこに腰を下ろした。

「ルナ、今日は疲れましたね〜」

オレはあくびをしながら、思いっきり伸びをした。

「ん」

ルナもオレの真似をして返事をする。なんだか、自分に妹ができてみたいで新鮮な感覚だ。

もしかすると、家に家族以外の人がいるのは初めてかもしれない。
ルナは、今日一日でたくさんの『初めて』をくれる。

それも結構激しい。
とりあえず、今日はゆっくり休むことにした。只今の時刻は午前0時30分。
普通の人だったら、そんな夜中に夕飯は食べないだろう。今日は断ったが、今までは普通にそのぐらいの時間帯に食べてきた。

太るとかは……考えたことがない。

オレとルナは、横に並んでベットに横たわり、布団をかけ、まぶたをゆっくり閉じた。

「ルナ、おやすみなさい」

「ん」

そうして、オレたちは夢の中へと体を委ね、夜は過ぎていった。