ルナはやっぱり女の子だ。

肌はすごく白いし、肩幅も男のオレよりも狭い。少し顔を覗くうなじも、つむじから綺麗に伸びる髪も、全てが美しい。

「(って、何考えるんですか!?オレ!これじゃまるで変態じゃないですか)」

オレは少し冷静になって、ルナの背中を洗い、背中全体に白い泡が広がったのを確認すると、右斜め前にあるシャワーを手に取った。

背中についた泡をシャワーで流すと、流れた泡が足元をゆっくり流れていく。

「ルナ、これ以上はさすがに無理です。前は、自分で洗ってください……」

そう言うしかなかった。

「(経験不足のオレには無理です!)」

心の中で叫びながら、ルナに泡だったスポンジを渡した。
そしてオレは、先に入ると言って、ルナから離れ、湯船に浸かった。

先程言ったように、うちは普通の家より多少広い、と思う。
だって、今入っている湯船だって、ざっと六人は入れる。着替えをする場所に一気に入れるぐらいの人数と同じ。

それよりも、傷とかそういうのは一切無かった。もちろん、ルナのこと。

あんな病室みたいなところにいたから、最初は病気か何かだと思ったけれど、ピンピンしている。

それで、てっきり大怪我を負っているのだと思っていたが、傷一つない綺麗な体だ。

ルナはまさしく、ミステリアスだ。

彼女にどれほどの謎が詰まっているのかとても気になる。
好奇心にかられるいきなりの出来事に、オレの頭の中は、まだ混乱状態だ。

多々ある考えを脳内でグルグル回しながらルナの顔を見ていると、たまたま目が合ってしまった。

約1、2メートルも離れた所から見ていたオレの視線に気づくなんて、本当に人間離れした超人並みの感覚。

洗い終わったのか、ルナはオレの方に近づいてくる。
恥ずかしいのと、申し訳なさで、オレは即座に目を逸らした。

ルナが、お湯に足を入れる。そこから、チャポンという音が鳴る。

オレの真横で……。

「(な、なんでオレの横〜!?)」

驚きを隠すことを忘れ、ブルブルと震えて、タジタジのオレ。

ルナは気にせず、熱いお湯にびっくりしたのか、小さな声を漏らしつつ、体全体をお湯の中に入れた。

何を話せばいいのかわからないオレたちの間に、沈黙が流れる。

とりあえず、気になっている質問をルナに聞いてみることにした。

「ルナ。あの、ルナって、今までどんな風に過ごしてきたんですか?」

「……ん?」

沈黙の後の『?』。これから一緒に暮らしていくと考えると、少し不安になってきた。

今のところ、ルナに通じる言語はない。となると、かなりコミニケーションが取りにくいということだ。

なんとかなるかも、と希望を抱けるのは物覚えがいいこと。唯一そこがこれからの希望に繋がる部分。

本当にルナは何も知らないみたいだし、この調子でオレが教えれば、いつかは言葉も覚えてくれるかもしれない。

「やっぱりいいです」

結局、ルナからは何も聞き出せず、再び浴室に沈黙の空気がつくられた。

沈黙の中、オレの体は徐々に熱くなり、だんだんのぼせてきそうになった。

「ルナ、オレ、ちょっとのぼせそうなのであがりますが、ルナは……」

「ん」

返事をしたルナは、上半身を湯から出したオレの手を掴んだ。
そしてオレたちは、湯からあがると、この状態に少し慣れてきたオレたちは髪を洗うと、浴室から出た。